今回の表紙は、春の柔らかなイメージをうさぎのモフィで表現しようと思ったなり。
なかなか時間もなくうまく描けない中、偶然知り合いが子供と描いた絵が送られて来たなりよ。
イメージぴったりだったので即採用!
コラムは、厳冬の様子をリアルに描いてみたなり。
読んでみてくれなり。
COLUMN 温故知新
Es Durの電牧線
クリミア半島を巡る米露の攻防が激しくなり、地理的要衝であるウクライナは分断の危機に晒されている。軍事衝突による無感情なBlue Bloodが流れ、大国ロシアの巨大化が懸念される。歴史は繰り返されるのか。ボクシングWBCヘビー級世界王者のビタリ・クリチコは、改革を目指すウクライナ政党UDAR党首でもあり、混乱を極める母国救済へ全精力を注ぐためベルトを返上。5月実施のEU主導による大統領選へ立候補を表明した。
牧場では、黒毛の2巨塔を中心とした主導権争いも激しい。この間のWeek Endも、アマ率いる東軍とサンの西軍によるサイレージ争奪戦が繰り広げられ、ゆかりら若い中堅層を引き連れ着実に勢力を拡大している東軍が、栄養豊かな一番草を頬張っていた。ヒマ、ハタチが中心のいじめっ子軍団は、影の薄かったリブ、未経産ミトを舎弟に加え、弱い茶褐色のジャージー種に向け牙をむく。彼女らのSadistic Desireを満足させるための生贄は後を絶たない。柔らかな横っ腹に硬く鋭いツノを突き立て、裂けた外陰部から流れ出る血が雪面を紅に染める。次は誰がJokerを引くのか。
厳冬の大雪は、人間のみならず牛たちも疲弊させる。サイレージ草架へつづく山道は雪で遮断され、除雪に追われる人間を横目に狭いパドックで僅かな乾草を奪い合う。行動を制限される精神的ストレスは不要な抗争を生み、肉体的に傷つき、栄養価の高い草にありつけない弱い牛は痩せ、徐々に気力を失っていく。キティは山の斜面で倒れ血を吐いた状態で発見された。数ヶ月に渡る一進一退を繰り返したドロティアは、久々に立ち上がった途端にドサっと昏倒し永遠の眠りについた。彼女らが倒れるたびに動揺する私の心は、降り注ぐEndless Rain。倒れたドロティアから微かに溢れ出るTears。気候の厳しい冬の季節、牛たちのVoiceless Screamingを感じ取る大事さを痛切に思い知った。
一方で種牛カーンは、相変わらず元気だ。巨大なトラクター背後の大きな鉄のコロコロに頭突きをカマすのがマイブームな彼は、跳ね馬のように飛び、舞い、雄としての強さアピールに余念がない。雌牛たちの発情を見逃さずStanding Sexを繰り返す。意外な求心力のある彼には、彼女たちの小競り合いなど何処吹く風だ。牧場の飼い猫たちも待ちきれない春の季節に向け発情を露わに交わり、牛舎に響き渡るOrgasmな喘ぎ声をあげる。ジローとブナのオス猫たちは、外敵のノラ猫(通称)デラックスの絶え間ない侵攻に一触即発、かと思いきや逃げ隠れる。ここにも可愛らしい攻防がある。
早朝、雪に埋もれる電気牧柵を見回る。ピーンと張り詰めた電牧線を指で弾くと、積もった雪がスローモーションのように舞い散る。7ボルトの電流がビリっと全身を霞め、不協和音のEs Durが頭をよぎる。あぁ、頭が痛い。寒さと積雪の厳しい冬は峠を過ぎた。待ち遠しい春の息吹を夢想しながら、元気な牛たちの喧騒は
Unfinished…いつまでもつづく。