1発目のコラム、素直に簡単な自己紹介から。
Skies are clear.というフレーズが好きで、山の風景が視界良好、自分の将来も?と掛け合わせています。
牧場新聞は手書き、というルールがあるようなので、乱雑な字ですが読んでみてください。味わいはあるかも?
【コラム - 温故知新】
Skies are clear.(視界良好)
世界6カ国による統合軍事演習シミュレーションの最中、米軍戦闘機F15を操るベテランパイロットが発したこの言葉を合図に、ミッション遂行に向けた戦闘の火蓋が落とされる。今年3月まで私が東京で携わっていた仕事は、戦闘機や無人機、ヘリコプターやAWACS(早期警戒管制機)、地対空ミサイルなどを用いた日本本土の防衛戦略立案に関わるものであり、酪農とは無縁の世界に居た。そして現在は、下閉伊郡岩泉町上有芸にある中洞牧場で、365日牛の完全放牧、そして山林保全を行なう山地酪農を30年前から実践している中洞正 牧場長の元、若いスタッフとともに牛飼いと山の管理に勤しみ日々汗を流している。
宮古から車で走ること約1時間、緑豊かな山々を背後に人里離れた曲がりくねる山道を猛進すると、木製のアットホームな看板に迎えられ中洞牧場に到着する。山をふと見上げると、今にも吸い込まれそうな碧い空、急傾斜な山の斜面に絨毯のように力強い根を張る野芝、そこで美味しそうに芝を喰み、仲間同士で毛繕いをし合い、時折空を見上げベロをくねくねさせながら舌鼓を打つ50頭近い牛さん達の姿が目に飛び込む。空の青、芝の緑、ジャージー牛の黄土色が三位一体となり、美しい風景のトライアングルが完成する。ここはまるで桃源郷、お花畑があればアルプスの少女ハイジが出現しそうな世界である。
この風景は毎日見ても新鮮で飽きない。早朝日の出とともに東側斜面を弱く照らし長く伸びる牛の影、日中の強い日差しで明るく輝く野芝、夕暮れとともに訪れる黄昏に見入る愛くるしい牛たち、これら景観は四季を通して日々同じことはない。
西方彼方から轟音とともに、遥か牧場上空を過ぎ去る演習中のF2戦闘機。曇りひとつ無い空を見あげ、モーと響き渡る牛の合唱(鳴き声)を聞きながら、午後も木を切り、牛を追う。
“視界は良好”である。